イケメン小説家は世を忍ぶ
「私は先生の小間使いじゃありません!」

クルッと振り返って声を荒げるが、桜井先生はそんな私を楽しげに見て無敵の笑みを浮かべる。

「原稿が仕上がらなくてもいいんだな?」

先生の台詞にワナワナと震える私。

人の弱味につけこんで……。この悪魔!

「牛乳でいいんですね?」

怒りに満ちた目で確認すると、桜井先生はゆっくりと頷いた。

「ああ。宜しく頼む」

子猫を撫でながら優雅に微笑むその姿が悪魔に見えるのはなぜだろう?

美形だしいろんな才能がある男だけど、仕事じゃなきゃ絶対に関わりたくない。

プンプン怒りながらリビングに入ると、佐代さんが綺麗にアイロンがけした私の服を渡してくれた。

「結衣さん、どうぞ」
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