イケメン小説家は世を忍ぶ
作家という職業は、俺にとって都合のいい仕事と言える。

俺は訳あって公に顔を出すことも、本名を明かすことも出来ない。

桜井健は俺のペンネーム。

日本の桜が好きで自分のペンネームに入れた。『健』は俺の本名に由来している。

作家という仕事はペンネームで仕事が出来るし、顔を公表する必要もない。

俺の素性を知る人間は、まさか俺が日本で小説家になっているとは思わないだろう。

ここで俺の素性を知っているのは朝倉さんと佐代さんだけだ。

小説を気ままに書いて暮らす日々。

気づけば俺は二十七歳に……。

だが、最近はそんな生活にどこか虚しさを感じるようになり、思うように作品を書けなくなっていた。

おまけに右手を火傷して、フラストレーションが溜まる一方。

そんな時、彼女……朝倉結衣が俺の前に現れた。

彼女がうちに来た日はちょうどお手伝いの佐代さんがお休みの日で、家には俺ひとりしかいなかった。
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