イケメン小説家は世を忍ぶ
だが、結衣は赤面して狼狽えるばかり。

おまけに 「……あまり激しいと官能小説になりませんか?先生って確か恋愛小説書かれるんですよね?」 なんてやんわりとこの俺を注意する始末。

「俺を担当するなら俺の本くらい読んでるよな?」

結衣の発言が気に食わなくて、あえて意地悪な質問をした。

「……いえ」

俺の視線を避けて、結衣は小声で言う。

彼女の答えなんて聞かなくてもわかっていたが、彼女にそれを認めさせて俺には必要のない人間というのをわからせたかった。

「まさか朝倉さんが俺の作品も読んだこともない人間を寄越すとはな……」

結衣を見下すような目で見ながら、朝倉さんの意図を考える。

思慮深い彼が、身内とはいえどうしてこんな使えない娘を俺の元に寄越したのか?

……考えるだけ時間の無駄か。

俺の小説を読んだこともなく、社会人としても未熟な彼女を、使える要素は皆無だと思って俺は冷たく追い払った。
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