イケメン小説家は世を忍ぶ
「わー、綺麗。神戸の異人館みたい」

感嘆の声をもらし、インターフォンのボタンを鳴らそうと手を伸ばす。

作家の家に訪問すること自体初体験の私。

ブルブルと手が震えてくる。

何の考えなしにここまで来ちゃったけど、やっぱ緊張するよ。

ハーッと大きく深呼吸すると、思い切ってインターフォンを鳴らした。だが、応答はない。

「……あれ?不在なのかな?」

首を傾げながらドアをじっと見る。

伯父さんは至急と言ってたのに……。

念のためもう一度インターフォンを押すが、やっぱり反応はなかった。

何か作業でもしてて手が離せないのだろうか?

それとも家を間違えた?

先生が困ってるって伯父さんが言うから来たのに……。

「困ったな。……最後にもう一回押して出なかったら、電話しよう」

ゆっくりインターフォンを鳴らすと、スピーカーの部分から男性の声が聞こえた。
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