イケメン小説家は世を忍ぶ
フッと微笑しながらユアンを注意する。

彼は昔俺の教育係だった男。俺にとっては兄に近い存在。

幼少の頃から俺がイギリスに留学する十五歳の頃までユアンと一緒に過ごした。

背は俺より小さく百七十五センチ位で細身だが、ユアンは勉強だけではなく武術にも長けていて俺の護衛でもあった。

俺より七歳年上で有能な男。しかし、生真面目すぎるという欠点がある。

「近いうちにアーロンが動きます」

ユアンがそう報告するが、俺は冷ややかな視線を投げた。

「だから?俺にはもう関係ない」

ユアンは俺を蔑むような目で見返す。

「よくそんなことが言えますね。そんな仙人みたいな生活して楽しいですか?今の自分に満足してますか?」

刺々しい口調でユアンが言うが、俺は何食わぬ顔で返す。

「日本に来て七年経った。あの国に戻ったところで俺の居場所なんかない」

「そう思ってるのはあなただけですよ。みんなあなたを……‼」
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