イケメン小説家は世を忍ぶ
こんなの……見ちゃいけない。

ビックリして思わずガン見してしまったけど、ハッと我に返り今さらだけど目を逸らす。

「……朝倉出版から参りました朝倉結衣といいます。あのう、桜井先生はご在宅でしょうか?」

目の前の男性を意識してしまうと、急に顔が火照ってきた。

だって、恋人もいないし、半裸の男性なんて見慣れていない。

同じ男でも父とは全然違う。いや、父とこのイケメンを比べちゃいけないわ。

「……朝倉社長と同じ名字のようだが、身内なのか?」

彼の魅惑的な低音ボイスが耳に届く。

「……はい。朝倉の姪です」

私は恥ずかしくて顔を上げることが出来ず、小声で答えた。

「……こんな小さなお嬢ちゃん寄越されても困るんだが」

困惑と言うよりは、迷惑そうな男性の声に思わずカッとなってパッと顔を上げる。

「お嬢ちゃんじゃありません!二十二歳の大人です!」

私は彼の言葉を否定すると、バッグから免許証を取り出して突き出すように彼に見せた。

「ふーん、本当らしいな。これは失礼」
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