イケメン小説家は世を忍ぶ
あれは私達を心配させまいとする彼の優しさだったんだと思う。

だって、伯父さんの頬はこけてて、ひどく疲れた顔をしていた。

そのセピオンで今度はクーデターなんて……。

日本人が巻き込まれてなければいいのだけど……。

先生が真剣に観ているのは誰か知り合いが旅行しているからなのだろうか?

「……お嬢ちゃん、佐代さんにタクシーを呼んでもらうから今日は帰れ。もう来なくていい」

桜井先生は、私の顔も見ずに感情を抑えた声で告げた。


「先生……?訳がわかりません。着替え用意して戻れって言ったのは先生じゃありませんか!」
私が文句を言うと桜井先生は冷たい声で言い放つ。

「気が変わった。やっぱりお前は使えない。締め切りは守るからもうここへは来るな」

いつもの嫌味なセリフだったけど、先生はどこかおかしかった。

まるでわざと私に嫌な印象を持たせるような……そんな言い方だ。

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