イケメン小説家は世を忍ぶ
心の中はもやもや。

タクシーの中、窓の外を眺めながら、先生のことを考えた。

やっぱりさっきのニュースのせいだろうか?

締め切りまで一週間もない。

でも、今の私は締め切りよりも彼の様子の方が気になった。

アパートに着くと、電気をつけて先生のスケッチブックを見る。

最初の十ページ程は、先生が可愛がってる猫のスケッチで見ていてとても愛らしかった。

ミルクを飲んでいるとこ……眠っているとこ……蝶々とじゃれているとこ……見てると自然と笑みがこぼれる。

桜井先生がすごくこの猫を可愛がってるのがわかる。

そして……最後に書かれていたのが……庭の桜を見ている私。

昨日の出来事なのに……なんだろう。

胸にジーンとくる。

あんだけ私のこと怒ってたのに、私にこれをくれるなんて……。

それに、桜井先生、今日の夕食の時は箸の持ち方までレクチャーしてくれたんだよね。
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