イケメン小説家は世を忍ぶ
極上のイケメンは免許証にチラリと目をやると、フッと人を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

「まあ、とりあえず上がれ」

イケメン男性がサンダルを脱いで玄関を上がると、私もパンプスを脱いで彼に続いた。

「……あのう、桜井先生はご在宅なんですか?」

長い廊下をスタスタと歩くイケメン男性の背中を見ながら声をかけると、彼は私の方を振り返った。

「俺が桜井健だ」

ニヤリとしながら左手で濡れた前髪をかき上げるが、その仕草が何とも色っぽい。

「ええ~!」

私は衝撃の事実に叫び声を上げ、目を見開く。

桜井健ってもっと気難しそうなおじさんかと思ってた。

どう見てもモデルかイケメン俳優って感じなんですけど……。

こんなイケメンなのに、どうして素顔を公表しないんだろう?

「煩い。騒ぐな。服を着てくるからそこのリビングで適当にくつろいでろ」

顔をしかめながら注意すると、桜井先生は手前のリビングのドアを指差し、自分は別の部屋に行ってしまった。
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