イケメン小説家は世を忍ぶ
ビデオカメラをセットすると、眼鏡を外して前髪を下ろし、ビデオカメラに向かって数分間語りかける。

そのデータをユアンにメールで送り、俺の本来の名前で今回のクーデターを強く非難する声明を出すよう指示を出し、またクーデターの情報を集めてマスコミにリークするよう命じた。

デスクの上のデジタル時計に目を向ければ、午前五時過ぎ。

それから三時間ほど睡眠を取って、下に下りてシャワーを浴びてダイニングに向かうと佐代さんが朝食の準備をしていた。

彼女はいつも八時半くらいに朝食を用意する。

俺の仕事は不規則だし、俺が寝ている時はラップをして冷蔵庫にいれておいてくれる。

「おはよう」

俺がいつものようににこやかに挨拶をすると、佐代さんも「おはようございます」といつもの柔らかい笑みを浮かべた。

「佐代さん、急で悪いんだけど、しばらくここを離れてくれないか?一ヶ月……いや三ヶ月かな。沖縄とか温かいとこでのんびりするのも楽しいかもしれないよ」
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