イケメン小説家は世を忍ぶ
「……国に戻られるんですね。でも、私はここにいます。誠さんの家はここですから」

佐代さんの目には、確固とした意志が宿っていた。

「佐代さん……」

『誠さん』と言うのは俺の母方の叔父で、昔、佐代さんと結婚の約束をしていたらしい。

だが、叔父は結婚式を迎える前に交通事故で亡くなってしまった。

それでも、佐代さんはお手伝いさんとしてここに住み続けている。

俺と同じように佐代さんもこの家にいっぱい思い出があるのだろう。

彼女を説得してここを離れてもらうのは無理……か。

ユアンに頼んで護衛をつけるしかないな。

「私の心配はなさらなくても大丈夫ですよ。自分で選んだことです。後悔なんてしません。それに、女だって強いんですから」

俺の考えを読んだのか、佐代さんは優しく微笑む。
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