イケメン小説家は世を忍ぶ
古い真鍮製のドアノブに手をかけリビングに入ると、そこは古き良き時代を思わせるノスタルジックな空間。

広さ十二畳程のリビング。

天井にはユリの形のシャンデリア、イギリス製らしきアンティークのソファセットに綺麗に磨かれた木製の丸テーブル。奥には五十インチはありそうな大きなテレビ。

壁際に置かれたガラス扉のキャビネットには、高価そうなティーカップが並んでいる。

丸テーブルの上にはノートパソコンが置いてあった。

「さすが売れっ子作家の家って感じ」

辺りをキョロキョロ見渡していると、畳一畳分はありそうな大きな絵画が目に映った。

ブルーローズに囲まれた綺麗なお城の絵。

童話に出てきそうなくらい幻想的で美しい。

「……誰が描いたんだろう?」

絵の前に立ってじっと見ていると、突然私の頭が重くなって耳元で桜井先生の声がした。

「さあ、誰だったかな?」

桜井先生が私の頭に顎を乗せ、寄りかかっている。
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