イケメン小説家は世を忍ぶ
やはり皇太子の名に相応しく、オーラがあって、堂々としていて……私とは違う世界の人なんだって思った。

三分程の動画を見終えた私は、しばらく放心していて、衝撃のあまり電車を乗り過ごしてしまった。

先生が素顔を公開しなかった理由や、昨日のセピオンのニュースで様子がおかしかったことも、これで説明がつく。

本来ならば、桜井先生は普通に会うことも出来ない高貴なお方。

いや……そもそもあんな売れっ子作家に会うことだって滅多にないことなのだけど……。

桜井先生との二日間の出来事が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。

会って三十分くらいで帰れと言われ……口述タイプの時に罵倒され……鼻を噛まれ……からかわれて笑われ……。

でも、昨日は箸の持ち方をレクチャーしてくれたし、スケッチブックも私にくれた。

意地悪で俺様な先生だけど……優しいところもある。

昨日、急に私に帰るように言ったのも私を巻き込まないためだったのかもしれない。
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