イケメン小説家は世を忍ぶ
「『先生』?……結衣ちゃん、ひょっとして彼が桜井建先生なの?」

大杉さんの質問に、私は固まった。

どうしよう……?

スーッと背中に嫌な汗が流れる。

桜井先生の顔がバレちゃう!

何とか誤魔化さないと……。

「……違います!昔……昔通ってた英会話の先生かなって思って……」

誤魔化そうとするけど、嘘をつくのが苦手で、声が尻すぼみになる。

「え?桜井建?どの人~?」

すごく興奮した顔で雅柚子先生が騒ぎ、バッグからスマホを取り出した。

私の声は、彼女の声にかき消される。

「あの……違います。私の勘違いで……」

そう否定しているのに、大杉さんは雅柚子先生に顔を近づけ声を潜める。
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