俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
アリサは体をひねり抵抗してきたが、ぎゅっと強く包み込むと俺のTシャツをぐしゃりと握った。
次第にTシャツの胸元が彼女の涙で湿っていった。
「うっ……でも一言多いよ……っ。ばかぁ……」
鼓動がどんどん早まっていく。
次々と湧き出してくる想いや衝動を必死に抑えつける。
アリサは肩を震わせて泣き続けていた。
その振動に心を揺さぶられながらも、
アリサが安心して感情をあらわにできるよう、左手できつく包み込みつつも、右手で優しく頭を撫で続けた。
――『お前はよく頑張っているよ』
最後にそう言い残した親父を思い出した。
俺にとって親父は超えることのできない存在だった。
アリサもそうだ。
可愛くてモテて勉強もできて俺をガキ扱いしてきて。
ムカつくけど、それで良かった。
アリサは、いつでも俺の先を行っている存在でいてほしいと思っていた。
彼女が自分の意のままになりそうな瞬間、いつも得体のしれない拒否反応が生じていた。
これ以上踏み込んではいけないラインを自分の中で勝手に作っていた。
ただ、なぜだろう。
今は離すことができなかった。
俺の言葉によって、俺の胸の中で涙を流すアリサを。
心地よい胸の苦しみと、彼女の温もりをもっと感じていたかった。