俺に彼女ができないのはお前のせいだ!



選んだのは、東京のはじっこの街にあるマンション。


部屋はせまいけど、都会すぎない場所で家賃も安い。



一息つきたいものの、引っ越し業者に運んでもらったダンボールが床に並んでいる状態。


さっさと片付けて部屋を作ろうと思った、その時。



――ピンポーン。



安っぽいインターホンの音が響いた。



嬉しさのあまり口元がゆるみそうになったが、こらえながら玄関へと向かう。



ドアが開くとともに、外からの光が差し込んでくる。


逆光になったシルエットが、目が慣れるにつれはっきりと姿を表していく。



「えへへ。さっそく来ちゃった」



懐かしいような甘い香り、


茶色に染まった長い髪、うわずった声。


そして、大きな目をやわらかく細めた、可愛らしくてまぶしい笑顔。



胸が苦しくなるほど、嬉しさと愛おしさがわきだしてきた。



「……うん」


「えーそれだけー? テンション低っ。もっと喜んでよー」



いいじゃんカッコつけたって!


ウェーイ! とか突然喜ばれても困るだろ!



俺を訪ねてきたのは、地元にいた時よりも、大人っぽくなったアリサだった。



< 263 / 269 >

この作品をシェア

pagetop