俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
「は? 留学?」
部屋の片づけを手伝ってもらい、コーヒーで休憩をした時。
アリサは得意げにその二文字を口にした。
「うん。前期終わったら半年休学して、ロサンゼルスに行ってくる」
「まじすか」
「ほら、お父さんとお母さんの会社、海外との取引もしてるから、あたしも英語できるようになりたいし、海外での生活にも興味あるし」
「は、はぁ……」
まあ、アリサが自分で決めたことなら、受け入れたいよ。尊重したいよ。
でもさぁ、東京の次はアメリカって。スケールでかくなりすぎだろ!
あっけにとられているうちに、
アリサは俺の隣に来て、顔をのぞきこんできた。
「寂しい?」
「まあ」
「心配?」
「うん」
前よりも茶色くなったしゆるく巻かれてはいるものの、
相変わらずつやっつやな彼女の髪を撫でる。
すると、アリサはふっと表情を曇らせ、まぶたを伏せた。
「そっかぁ。じゃあやめよっかな……せっかく良ちゃんもこっち来たし」
「は。何言ってんの。お前が決めたことなんでしょ」
「冗談だよ。行くよ。もう準備してるし」
つんとした言い方ながらも、少しだけ瞳が揺らいでいるのを俺は見逃さなかった。