今夜、愛してると囁いて。
「ああ、うん。よろしくお願いします」
短くそう返して、握手を求められた手からは目を逸らした。
客が入れ替わるこの時間帯は比較的人が少なく、代わりに何席かにお客さんが去ったあとの食器類が残っている。雑談よりもまずはそちらが大事。
トレーを持ってホールの方に向き直ると、後ろから声が聞こえた。
「俺も手伝いますよ」
そう言った伊月くんの手際は非常に良く、あっという間に食器類がまとめて片付いてしまう。
食器をギリギリまで山積みにされたトレーを持っていこうと手をかけると、その上から大きな手が触れた。