今夜、愛してると囁いて。
「まあ、うん。恥ずかしながら」
「マジですか!?香澄さん美人なのに!?」
そんなに驚くことか。
大きな声を出した伊月くんに指で「静かに」と促す動作をすると少し気まずそうな顔をしてすんません、と声のボリュームを落とした。
「へえ。男に声かけられたりとかしないんすか?」
「全然」
大学生だし色恋に興味あるんだろうなあ。
残念だけれど今の私は叩いても煙が出てくるようなものは何も持ち合わせていない。
私の返答に、伊月くんは少しだけ考え込むような仕草を見せたあとにパッと笑った。
「それってつまり、オレにもチャンスありますよね?」
「……ありません!」
伊月 梓。私から見た第一印象はチャラそうな若者。こういったタイプは非常に苦手だ。