今夜、愛してると囁いて。
「あ、香澄さん。こんばんは」
「……その声、伊月君?」
ピントの合わない目を凝らしてそう言えば、目の前の人は肩をすくめたようだった。
「確認しないで開けるなんで危ないですよ。不審者だったらどうしてたんですか?」
ようやくクリアになった視界に映ったのは、寒そうに鼻を赤くしたイケメンアルバイト君……もとい、伊月 梓だった。
「今日バイト行ったら香澄さん休みって聞いてびっくりしましたよ。店長に聞いたら風邪だって」
スポドリとか一応買って来たんですけど、とコンビニの袋を目の前に掲げられる。
動くのも億劫だったから、大変有り難いんだけど。