今夜、愛してると囁いて。
男の人の料理、というだけで多大なる偏見を持っていたことを今ここに告白する。
「めちゃくちゃ美味しかった……」
空になったお茶碗に視線を落としてそう呟くと、床にちょこんと座ってテレビを観ていた伊月くんが振り向いた。
「ホントですか?ありがとうございます」
「伊月くん、料理上手いんだね。びっくりした」
「小さい弟いるんで、たまに面倒見てて」
なるほど、バイトといい、先ほどの料理といいそれであの手際の良さはそこに由来するものか。
テーブルの上に置かれた水の入ったコップと、先ほど伊月くんが買ってきてくれた風邪薬に手を伸ばす。