今夜、愛してると囁いて。
「元カレとか?」
「……」
サラダドレッシングに手を伸ばして、一瞬あたしは固まってしまった。
しばらくの沈黙のあとドレッシングのボトルを上下して液体が混ざる音が響く。
「昔の、話だから」
突き放すようにそう言うと、伊月くんはあたしの肩に頭を寄せて、小さく呟いた。
「……ちょっと、妬いたかも。」
聞かなかったふりをした。
伊月くんを軽く振り払って完成したサラダのボウルを持ってリビングに向かう。
どうせ、この言葉だって彼の気まぐれだから。