今夜、愛してると囁いて。
「何ですか?」
「ううん。何でもない」
「元カレのこと、思い出したんですか?」
図星を突かれて、あたしは思わず不自然なまでに唇を固く閉じてしまう。
伊月くんはやっぱり、なんて笑い飛ばした。
「別にいいですよ、俺を元カレと重ねても」
「そんなこと、しないよ」
何を考えているのかわからない、何の感情も読み取れない瞳で伊月くんが見つめてくるから居心地が悪い。
ごまかすようにあたしもマグカップに口をつけて、ほうじ茶を流し込んだ。