今夜、愛してると囁いて。
「香澄さん、明日早番でしょ?俺、寝かしてやる自信ないんで香澄さんが次の日に余裕ある時までの楽しみにしておきます」
その言葉に冗談の色はなくて、あたしはマグカップを握りしめたまま固まってしまう。
その間に伊月くんは上機嫌な様子でマグカップを流しに下げて、上着を手に取る。
「また連絡しますね」
「あ、う、うん……」
伊月くんから連絡が来るときはシフトのことだったり、あとは……そういう時だけ。
こうして時々彼があたしの家に来て何度か身体を重ねているけど、可愛いと言うことはあっても好きだとか付き合ってだとかそんな言葉一度も聞いたことがない。
世間一般で言えば、あたし達の関係はただのセフレ。
一度の過ちだと思っていたものが、ずるずると続いてしまっている。
――彼にとってのあたしって、何なんだろう。