今夜、愛してると囁いて。
四話
痛いの痛いの飛んでいけ
昼下がりのカフェの店内。
談笑する主婦や赤ちゃんを連れて休憩に来た若い母親、パソコンを持ち込んで何やら難しそうな顔をするサラリーマンなどで賑わいを見せている。
とはいえ、ほとんどのお客さんが飲食をメインとしての来店ではないため従業員は暇を持て余していた。
「そういえば知ってます?」
ドリッパーのコーヒー豆やミルクの補充を終えた幸ちゃんが思い出したように話を振ってきた。
洗い終わってある程度水滴の落ちたグラスを拭きながら、あたしは空返事をする。
「梓くん、彼女いるらしいですよ」
ガラスの砕けるけたたましい音が店内に響き渡る。
動揺して取り落としたグラスがあたしの足元で、一瞬にしてガラクタへと変わり果てていた。