今夜、愛してると囁いて。


「大丈夫ですか?」


ホールの方でお客さんの対応をしていた伊月くんがキッチンに顔だけを出して状況を確認してくる。あたしは露骨に焦った口調になってしまう。


「だ、大丈夫。大丈夫だから」


割れたガラス片を拾い上げようとすると、伊月くんがあたしの近くまで来ていて手首を掴まれた。


「俺片付けるんで。さっちゃん、ホールお願いしていい?」

「は〜い」


伊月くんにそうお願いされたさっちゃんこと幸ちゃんは元気に返事をしてホールの方へ駆けていった。

それを目で追っていると、カチャカチャと音が聞こえたあたしは慌てて視線を手元に戻す。


「香澄さん意外とおっちょこちょいですよね」

「そんなことない……はず」


伊月くんが大きめのガラス片を集めてくれているので、あたしはキッチンの隅に置いてあったほうきとちりとりを持って細かなガラスを集める。

割れ物回収の袋に入れてゴミ箱の近くにおいて片付け完了。

あたしは伊月くんに頭を下げて謝ると、大丈夫ですよと朗らかに笑っていた。


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