今夜、愛してると囁いて。
「あ、マジですか?」
「うん。お客さんかと思って扉開けたら、伊月梓はいますかーって言われて」
それを聞いた伊月くんはどこか合点のいったような表情をして幸ちゃんにお礼を言っていた。
それから、従業員に挨拶して回っている。
「香澄さん、お疲れさまです。お先に失礼しますね」
「うん、お疲れさま」
最後に伊月くんはあたしのところに来て眩しい笑顔を向けてくる。
何となくそれを直視できなくて、あたしは食器を片付ける片手間のように返事をしてしまった。
「そうだ、香澄さんチョコレート好きですか?」
「ミルクチョコレートなら大好きだけど」
高校時代、授業の合間によくお世話になった。
若いうちは何を食べても何をしても平気だったけど、20代後半になってから昔みたいに毎日のように食べていたら肌荒れが酷くなったので、最近は控えているけど。