今夜、愛してると囁いて。
「はあ〜、やっぱりイケメン君の彼女は美少女か……」
幸ちゃんの声を聞きながら、これ以上は何も見たくなくてあたしは目を閉じた。
両手いっぱいのチョコレート菓子を握りしめれば、ポロポロとこぼれ落ちて床に落ちる。
あたしなんて、肌も綺麗でなければ髪の毛だって傷んでる。化粧も上手じゃないし、あの子みたいに綺麗に笑うこともできない。
「……期待しちゃって、バカみたい。」
あの子が本命なら、どうしてあたしに優しくするの?
純粋そうなあの子を穢さないための、欲望のはけ口にしたいだけ?
不毛な考えばかりが頭を過ぎって、あたしは目を開けて幸ちゃんに手を出すように言う。
「あげる」
伊月くんからもらったお菓子を全部押し付ける。
幸ちゃんは驚いたように目を見開いたけど、すぐに笑ってみんなにもあげてきますと言って休憩中の従業員がいるであろう事務所の方にパタパタと駆けていった。