今夜、愛してると囁いて。
五話

なんて滑稽な結末



最後に伊月くんがあたしに振り返りもせず去っていった日からもう2週間が経った。

伊月くんとは1、2回ほどシフトが一緒になったことがあるけど今までのように気軽に話しかけてくることはなくなった。

話しかけられることなんて業務内容だけ。目も合わない。伊月くんから連絡が来ることもなければ以前のように家に来ることもない。


「最近梓くん元気ないですよね」

「え?うーん……まあ、お客さんの前ではちゃんと笑ってるし仕事に支障がなければいいんじゃない?」


あたしには何も関係ありませんとでも言うように可愛げもなくそう返答すると、幸ちゃんは確かに仕事はきっちりしてますけどけ、と苦笑した。

あたしと伊月くんの関係なんて誰にも話していないし、誰にも気付かれていないだろう。


もしもこのまま関係がフェードアウトしたって、初めましてのように戻るだけだ。


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