今夜、愛してると囁いて。
「そういえばこの前の美少女、梓くんの彼女じゃありませんでした」
お冷のピッチャーの交換作業をしていた幸ちゃんが突然あたしを振り向いてそう告げる。
あたしはあまり反応しないように努め、冷静を装って返事した。
「……へえ?遊び相手?」
「気になります?」
幸ちゃんがやたらとにこにこしているのであたしは首を傾げる。
あたしが人の噂話に乗ることがあまりないから、珍しさからだろうか。
「香澄さん、梓くんのこと好きですよね?」
その言葉にあたしは力の加減を間違えてテイクアウト用の紙のコーヒーカップの補填をしようとして、カップをカウンターの上にぶちまけてしまった。