今夜、愛してると囁いて。


「……な、何で」

「え、図星だったんですか?すみません!」


冗談のつもりだったらしい幸ちゃんはあわわ!と手をバタバタさせて深く頭を下げてきた。


「いや、いいんだけど……。そもそも違うし」

「あ、それなら良かった……」


ほっと胸を撫で下ろしいつものように愛らしく笑った幸ちゃんに胸がちくりと痛んだ。


好きじゃないなんて――半分は嘘。


好きじゃなかったら、こんなに彼の行動に一喜一憂したりしないし彼女のことなんて気にしない。

幸ちゃんはピッチャーの表面を布巾で拭いて定位置に戻す。ガラガラと中で氷がぶつかる音が鳴り響いた。


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