今夜、愛してると囁いて。


「私達が見たあの女の子、妹さんだったみたいです。春から妹さんも一人暮らししてこっちの大学に通うみたいで」


以前伊月くんがあたしに少しだけこぼした家族について小さい弟がいると言っていたけど、歳の近い妹もいたのか。

まさか取り繕うための嘘ではないかと一瞬疑ってしまったが、すぐに近くにいた店長が知らなかったの?と幸ちゃんに言っていたので、伊月くんの口から出まかせではなかったらしい。

家族構成は履歴書で最初に確認しているからだ。


「そう、なんだ……」


彼女がいたのにあたしにあんなことをしているわけじゃなかった。

本人から何も聞いていないのに決め付けて、勝手に荒れて、あんな醜態を晒して――こんなんじゃ、伊月くんに嫌われたって仕方がない。


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