今夜、愛してると囁いて。
「……香澄さん?」
心配するように幸ちゃんがあたしの顔を覗き込んできて、ぎょっと目を見開いたあとにポケットティッシュを差し出してくるからなんだと思って顔を上げると、頬が濡れていることに気付いた。
「どうしたんですか?お腹痛いんですか?頭ですか?足ですか?」
こんなにも感情を乱したことが過去に一度もないあたしに対して、幸ちゃんがおろおろとあたしの周りを行ったり来たりする。
見える範囲にお客さんがいなくて良かった。
「香澄ちゃん、疲れたのかしら?今日はお客さん少ないし、閉店作業は私がやるから上がっても大丈夫よ」
見かねた店長のおばさんがあたしの背中を撫でてくれた。