今夜、愛してると囁いて。
「プロポーズも復縁も、断ったよ。他に……す、好きな人がいたから」
「え?」
わずかに上ずった伊月くんの声。
驚きと期待の色が彼の表情に戻って、あたしの肩に回った腕に力が込められた。
「誰ですか、それ?俺の知ってる奴?」
ここまできたらもうわかっているだろうに、伊月くんは確信はないのか不安そうに聞いてくる。
あたしは恥ずかしさで口をもごもごさせて、言葉を濁す。
「……知ってるも何も」
黙って目の前にいる彼を指させば、伊月くんは一瞬きょとんと目と口を点にしてあたしがそうしているように、自分を指さした。
「……俺?」
「うん」
うなずいて、視線を足元に落とす。