今夜、愛してると囁いて。
エピローグ
今夜、愛してると囁いて
カーテンも閉め切って、電気を消した真っ暗闇の中。ギシリとベッドの軋む音。
シングルサイズの小さなベッドは2人分の体重で沈んでいく。
「なんか、緊張する」
「え?今さらそんな……」
今までに、付き合う前から何度も肌を合わせたのに、伊月くんはあたしを抱き締めながらそんな弱気なことを呟いた。
「いや、だって今までは香澄さん、俺のこと好きじゃないんだろうなーとかそんなこと思いながら自暴自棄だったというか」
本当に緊張しているみたいで、いつもより声が小さい。
「お互い好きなんだなって、実感するとどうしたらいいかわかんないです」
あたしの服に手をかける伊月くんの手がかすかに震えている。あたしはそっとその手に自分の手を重ねて、笑った。
「あたしね、好きって、言って欲しい。ちゃんと」
今まで行為中、一度もお互いに口にしなかった言葉。
どちらからともなく唇を寄せあって口付けを交わせば、唇の隙間から漏れた吐息が甘く響く。
「愛してる」
fin.