ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
城での生活は楽しかった。


日々修行に明け暮れてたし、ケイゾウをはじめ友達もたくさん出来た。


それでも、家への手紙は欠かさなかった。


月イチくらいで書いてたし、両親もまめに返事をくれた。


あっという間に2年が過ぎて……王様に言われて一度、3日ほど里帰りしたことがあった。


村中で大歓迎されたし、父さんもあの人も喜んでくれた。


その時……子供ながらに若干気づいてはいた。


父さんがものすごく多忙になったこと、あの人がそれを寂しいと思っていること。


父さんは王様に言ったとおり、自分に追いつくために。


村のために頑張って頑張って、村の長にも認められて、長に次ぐサブリーダーになっていた。


家に帰ることも少なくなっていたらしい。


そのかわり、その評判は最高だったとか。


父さんは出張先なり出歩いた先なり、事あるごとに自分のことを自慢していたそうだ。


息子は城で、戦師になるために頑張っているんだ、あいつに負けない父親でないとな、みたくいっていたらしい。


親馬鹿満開でも、実行力が伴っていたから嫌味がなかったそうだ、むしろ微笑ましかったとか。


それから……目に見えて、両親からの手紙は間隔があくようになり、やがて途絶えた。


自分は出し続けていた、返事は出来たら欲しかったけど、来ないなら来ないでもよかった。


自分が無事に元気にやっていることを、二人に分かってもらえれば十分、と思っていたから。


一度帰ってから、3年が過ぎた。


戦師見習いから、戦師に昇格した。


王様に久しぶりに里帰りでもして来い、と言われて暇をもらい、家には連絡を入れずにサプライズで。


突然帰ったら二人は驚くかなあ、なんて思いながら。


久々に会う二人に思いを馳せながら帰ったら……


家がなくなっていた。


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