ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
トボトボと城に帰った。
庭でケイゾウと組み手していた王様は、自分の顔を見るなり、とんできて下さった。
それまで何故か涙は出なかったのに、急にこみあげてきて大泣きした。
王様はしばらく、何も聞かないで抱きしめて下さった。
ケイゾウはただオロオロしてたけど……
しばらくして落ち着いて、ようやく訳を話せた。
しゃくりあげながらのそのたどたどしい説明を、何度も頷きながら聞いて下さった王様は、頭をわしわしと撫でながらこう言って下さった。
『俺ぁ、お前の父ちゃんの代わりになってやるこた出来ねえが。
傷を埋めてやるくらいのこたぁ出来る。
だから、な?
……今日から俺がお前の親父分だ!
家がなくなったってぇなら、今日からここがお前んち!』
自分が泣きやんだ途端、ケイゾウが泣きだした。
王様も自分もびっくりして、ああそうか、父親をとられたように感じたのかな、と思ったら……違った。
『……だって、だって……シンラ、すっげぇかわいそう~』
泣きじゃくるケイゾウを必死でなだめていると王様は、そうやってると兄弟みたいだな、とおっしゃった。
『二人とも俺の息子なんだからよ、兄弟でいいじゃねえか!
ぶっちゃけシンラは自覚あったろ?』
たしかに。
親友、というより弟みたいだ、と思っていた節はある。
ケイゾウもようやく笑った。
王様はよっしゃぁ!と気合いを入れると、片腕で一人ずつ、同時に抱きしめて下さった。
嬉しかったし、寂しかった。
新しい一歩を踏み出すということは、それまでの過去を、思い出にしてしまわないといけないから。
この城で生きていく、皆素晴らしい人ばかりだ……それは分かってる、だけど。
父さんを思い出にしてしまわないといけないことが、なんだかものすごく申し訳ないようで……たまらなく辛かった。
*****
「……ふぅ……」
溜息をつきながら、コインを仕舞う。
あの後は……なかなか元気が出なかった。
まわりの皆の気遣いに応えられない自分が嫌で、王様に頼んで修行に出る許可を頂いた。
その時に弟子入りした先で、数ヶ月かかって、ウェスター国に伝わる武術の極意書を伝授してもらった。
自分が背負うものを作りたかったのだ。
屋上に続く非常階段の方でバタバタと音がした。
大方予想はついていた、イサキから自分の過去を聞いたモモが、謝りに来たんだろう。
ところが、勢いよくドアから飛び出してきた彼女は、自分が予想してたのとは全く違うことを言ったのだ。
「何よぉ、この親不孝もん!!
サイッテー!!」
庭でケイゾウと組み手していた王様は、自分の顔を見るなり、とんできて下さった。
それまで何故か涙は出なかったのに、急にこみあげてきて大泣きした。
王様はしばらく、何も聞かないで抱きしめて下さった。
ケイゾウはただオロオロしてたけど……
しばらくして落ち着いて、ようやく訳を話せた。
しゃくりあげながらのそのたどたどしい説明を、何度も頷きながら聞いて下さった王様は、頭をわしわしと撫でながらこう言って下さった。
『俺ぁ、お前の父ちゃんの代わりになってやるこた出来ねえが。
傷を埋めてやるくらいのこたぁ出来る。
だから、な?
……今日から俺がお前の親父分だ!
家がなくなったってぇなら、今日からここがお前んち!』
自分が泣きやんだ途端、ケイゾウが泣きだした。
王様も自分もびっくりして、ああそうか、父親をとられたように感じたのかな、と思ったら……違った。
『……だって、だって……シンラ、すっげぇかわいそう~』
泣きじゃくるケイゾウを必死でなだめていると王様は、そうやってると兄弟みたいだな、とおっしゃった。
『二人とも俺の息子なんだからよ、兄弟でいいじゃねえか!
ぶっちゃけシンラは自覚あったろ?』
たしかに。
親友、というより弟みたいだ、と思っていた節はある。
ケイゾウもようやく笑った。
王様はよっしゃぁ!と気合いを入れると、片腕で一人ずつ、同時に抱きしめて下さった。
嬉しかったし、寂しかった。
新しい一歩を踏み出すということは、それまでの過去を、思い出にしてしまわないといけないから。
この城で生きていく、皆素晴らしい人ばかりだ……それは分かってる、だけど。
父さんを思い出にしてしまわないといけないことが、なんだかものすごく申し訳ないようで……たまらなく辛かった。
*****
「……ふぅ……」
溜息をつきながら、コインを仕舞う。
あの後は……なかなか元気が出なかった。
まわりの皆の気遣いに応えられない自分が嫌で、王様に頼んで修行に出る許可を頂いた。
その時に弟子入りした先で、数ヶ月かかって、ウェスター国に伝わる武術の極意書を伝授してもらった。
自分が背負うものを作りたかったのだ。
屋上に続く非常階段の方でバタバタと音がした。
大方予想はついていた、イサキから自分の過去を聞いたモモが、謝りに来たんだろう。
ところが、勢いよくドアから飛び出してきた彼女は、自分が予想してたのとは全く違うことを言ったのだ。
「何よぉ、この親不孝もん!!
サイッテー!!」