ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
ただ、目の前のシンラがいつもとかなり様子が違う。


……かつての自分と同系列の顔をしている、というか。


「……ま、お前と俺どっちがマシか、なんて……俺には分っかんねえけど、な」


彼はそう言いながら、口調を強めた。


「信じてた人は、もういねえんだよ。

分かるか。

……塗り替えられたんだ。

そうせざるを得なかったんだ。

その気持ち……お前に、分かるのか?!」


今にもブチ切れしそうな彼、暮れていく春の空。


後ろでイサキが、ああもう……と心配げに呟いてるのが聞こえた。


ただ、こっちも全く引く気はないのだ。


……彼は気づいていないのか。


気づいてないふりをしてるのか。


昔は知らない、でも……少なくても今は。


彼は、お母さんを認めているはずなのだ。


「嘘ばっかり……」


どう伝えていいか分からない。


自分はシンラほど言葉がうまくない。


「は……?」


「どうして分かってあげようとしないの?

本当は分かってんじゃないの?

シンラ、お母さんのこと好きだったんでしょう、なのに……どうして?」


「……うるせえ、よ」


「ほら!

今だって、否定はしないじゃない!

シンラにとって、昔も今も……大事なお母さんなんでしょ!

塗り替えるだとか訳分っかんないことばっか言って……!」


「やめろってんだ!」


「やめない!」


お互いに睨み合う。


彼に完全に火をつけたことを自覚して、少し気圧されながらも、断固負けたくなかった。


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