ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
アルバムは、シンラと父親を写した写真ばかりだった。


どういう訳か、お袋さんが写ってるものは1枚もないのだ。


「……馬鹿、だ……」


シンラの声が震え出した。


モモが奴の方を振り向いて、驚いたように目を見開いていた。


「馬鹿だ、あの人……

んなことしたからって……消える訳も、消せる訳でもないのに……!」


シンラがきつく目を瞑った。


そこから、一雫。


「……誰よりも、記念日とか思い出とか。

大事にしたがってたくせに……!

カメラだって父さんよりも腕がよかったし、父さんよりも喜んで、いっつもはしゃいで嬉しそうに。

いっぱい撮りまくってたくせに。

……三脚買ったのだって、俺が三人で撮りたいねってねだったから……それを、それなのに!」


シンラの肩に片手をおき、もう片方の手で、髪をクシャクシャにしてやる。


二人とも、昔よく親父にやられたのだ。


「……ようやっと本音吐きやがったなコンチクショウ!

いっつも俺の前では、全然平気なふりばっかするんだからよぉ」


ちょっと、嬉しかったのだ。


シンラは基本、ええかっこしいだから。


「……うっせぇ。

もう……!

今になって、こんなもん持って来て……!」


「今だからこそ、言えるんじゃないですか」


静かな口調でウッキーが歩み寄ってきた。


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