ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
「……イッシン様だってそうなさったでしょう。

今は、まだこのアルバムを見せるな、とおっしゃった意味。

分かりませんか?」


分からないから、首を傾げた。


見れば、モモもイサキも不思議そうな顔をしている。


その一方でシンラは、落ち着き払ってこう言った。


「……俺が、あの人の決意を。

真逆に受け取るかもしれないから、でしょう。

もっとも……今さっきまでモモにつっつかれてなかったら。

真逆に受け取ってたと思いますけど」


「さすが、話が早い。

やはり貴方にはそうあってもらわないと」


「ちぇ……分かってらしたんですね、ウーさん。

今まで何も言われなかったくせに」


「お、さりげに抗議してますね」


「当たり前ですよ!

もう……かっこわり、俺……」


「ははは。

たまにはいいじゃありませんか」


「あの~……話がよく、分っかんないんですけど……」


モモが遠慮がちにおそるおそる、自分の気持ちを代弁してくれた。


おそらくイサキもそう思ってるはずだ、大きく頷いてる。


シンラは、ふ、と小さく笑った。


「つまりですね。

シンラのお母さんは、このアルバムをお向かいさんに預ける際に。

彼女が写ってる写真を全て抜いて、編集し直したのですよ。

シンラの思い出の中に、もう自分はいないよっていうメッセージを込めたんじゃないですかね」


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