ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
「……そんな!」


モモが両手で口元を覆った。


ショックだったらしい。


「なんでよ……!?

会ったらいいじゃない、親子なのに……!」


「……そんなに、シン兄のこともう知りません状態なの?

それってやっぱひどいよ、ほったらかしにするなんてさ……!」


イサキもモモの横に並んで抗議した。


「違う。

そうじゃなくて……」


「違うかよ!」


シンラが言い掛けていたけど、思わず割って入った。


「だって……他の男こしらえたんだろ?」


思ったままにそう言ったら、ウッキーに後頭部を一発はたかれた。


「……ストレートすぎです、王。

デリカシーの欠片もないですね」


「……ってぇなあ!

なんだよ、でもそうじゃねえのかよ。

シンラには悪いけどさぁ、つまりは浮気。

つまりはゴートゥベッド。

そういうことだろ?」


ウッキーはシンラを見た。


シンラは小さく頷いて返す。


「……大人の事情、とか。

もう少し言葉を選ぼう、とか思いませんか?

まあ……王には言うだけ無駄、ですかね……。

ともかく。

何かあったのは、おそらく事実。

……ただ、それをシンラ視点で見るか、お母さん視点で見るか、ですね」


シンラが、理解出来ない組3人と目をあわせて後を続けた。


「……寂しがりなんだよ、あの人。

俺は帰らない、父さんももういないってなったら……あの人ずっと一人でいたら、ぶっ壊れちまってもおかしかねえ。

多分、まあ……なあ。

ほら。

男女の仲、になったんじゃないかな。

たしかに、息子としちゃ居たたまれねえもんがあるけどさあ。

あの人は、もう戻れないって悟ったんだと思う。

いや、そう決意したんだ……きっとな。

いつまでも下向いてないで、切り替えて、過去を塗り替えて。

前向いて生きてくしかないってさ。

……俺がそうだったみたいに」


「……シンラ……」


モモが言うと、奴は少し照れたように一度目をそらし、はにかんで笑った。


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