ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
「まさか、モモに説教くらうとは思わなかったけどな。

……おかげさんで、なんかふっきれたよ。

なんてーか……うん、今でもやっぱ、許してはいないんだ。

だけど、分かったっていうか認められたっていうか……母親ってより、一人の人として。

共感出来た」


モモが目を潤ませた。


まあ……彼女にしちゃシンラに食ってかかるのは、一か八かの大勝負だったのだろう。


「……じゃあさ、なんで写真抜いちゃったんだろ?

アルバム返してくれるだけでいいじゃん。

むしろ、そのメッセージ内容じゃ誤解するよね?

俺、そこら辺からちょっと、よく分っかんねえんだけど……」


「さすがイサキ!

いいこと言う!

……実は俺も……」


そこだ。


シンラは、貴方の中にお母さんはもういませんよ、と言わんばかりのアルバムを見て、お袋さんを理解出来たらしいのだ。


……結果オ-ライっていやぁ、まあいいんだろうけど……自分からしたら、意味不明だ。


「んー……うまいこと言えてるか分かんねえけど。

あの人が写真を抜いたのは、あの人の過去から俺や父さんを消したかった、とかじゃないことだけは信じられるんだ。

あの人が記念とか、思い出とかを本当に大事にしてたことは分かってるから。

だから……本当なら、父さんのこと俺のこと、どれだけ大切にしたかったか。

それなのに、自分からそれを封印したってなると、並大抵の覚悟じゃない。

父さんのこと裏切ってしまったんだから、母親として失格です、もう会えませんって意味だと思うんだ。

俺はそう感じたけどな」


「……思い出は裏切りませんよ。

そういうことです」


ウッキーがどこか遠くを見ながら言った。


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