ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
「皆と感じ方が違うのは、貴方の中にお母さんとの楽しい思い出があるから。

そしてお母さんも、これを見たら貴方ならきっと分かってくれる、と信じて託されたのでしょう。

ただ……当時の貴方じゃ、お母さんの心境を理解するのは無理だったでしょうね。

だからこそ、イッシン様が王に釘を刺しておかれたのでしょう」


……なるほど。


親父は、シンラのお袋さんの気持ちが分かっていたのか。


それを認められないシンラの気持ちも。


改めて、自分の父親の偉大さを知った。


シンラがやや目を細めながら言った。


「王様には。

本当に感謝してます……俺、いつもお世話になりっぱなしで……」


「そう……ですね。

私もイッシン様に拾って頂いたクチですから。

あの方には、本当に……」


「あぁもう……クソ親父。

皆こんなにも待ってくれてんだ、奇跡の大逆転ぶちかますなりなんなりして、とりま早く起きやがれってんだよな……」


二人に親父のことを言われて、ちょっとしんみりと呟いたら。


シンラとウッキーが同時にあたふたと慌てた。


「ばばば、馬鹿たれ!

すぐ戻られるさ、決まってんだろ?!」


「当ーたり前です!

イッシン様に限ってそんな。

そんなこと言ってられると、イッシン様御復帰の際に報告しますよ?」


……おいおい、誰もそんな不吉なこととか言った覚えはないっての、そうつっこみたかったけどやめておいた。


二人が、自分を心配してくれてるのが分かるから。


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