ウェスター国戦師(いくさし)の書。~優しい追憶~
戦師はそんな新しいウェスター王の手となり足となり、日々雑務をこなしながらも常に自分自身を鍛えている、心身ともに……


「おやおや」


すぐ背後からいきなり声がして、慌てて振り向く。


「あの二人のことだから犬も食わないかと思いきや……結構荒れているようですね」


……不覚。


いくら二人の言い合いに注意がいっていたとはいえ、簡単に背後をとられるなんて。


「まだまだですね、イサキ」


「……すみません……」


「いえいえ、私に謝られても。

ご自分でますます精進なさって下さい」


彼はウキョウさん。


年は24、あれ26だったか……痩せ形マッチョの長身で眼鏡をかけた、ウェスター国の参謀だ。


戦師の長である大将と参謀であるウキョウさんが、主になってケイ兄をサポートし、新王の統治体制を確立してきた。


頭脳明晰、容姿端麗、それでいて実戦でもかなり強いという、天が二物も三物も与えたような人だ。


ただ……


「モモは……シンラの。

タブーに触れたそうですね?

いやぁこれ、どう展開していくんでしょう、ああもう目ぇ離せませんねえ」


「え……ええ、まあ……」


……ただ、なんというか……やたら面倒くさいというか相手をしたくないというか、そういう損な性格をなさってる、と思う。←絶対、言えないけど


全く……なんでシン兄とモモ姉の喧嘩の発端、知ってんだよ。




*****


『お疲れモモ。

今日、おやつに大将がアップルパイ焼いて下さったから。

お前の分、台所にとってあるから食ってきな』


『本当?!

やったー』


任務から帰ってきたモモ姉に、シン兄が声をかけた。


その際自分は、隣で寝転んで漫画読んでたんだけど……モモ姉が嬉しそうに走っていったのを見届けてから、シン兄をジト目で見る。


『……さらっと、よく言うね……』


『今日はいいの!

エイプリルフールなんだからさ』


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