甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「私ではお役に立てないと思います」
「いや、でも......」
フィーネが口にした断りの言葉に、ブランドン伯爵は戸惑った顔をした。
少し眉を下げ情けない顔になる。
でもそんな顔でさえ、彼がすると魅力的だ。
「あなたが思っているよりもクリスティーナはあなたに夢中ですよ。
だから自信を持ってくだ......」
弱気なブランドン伯爵をはげまそうと思って口にした言葉は、途中で
引っ込んでしまった。
ブランドン伯爵が急にフィーネの両手を握りしめたからだ。
「本当のこというと、自分の中に生まれた戸惑いが僕を堪らなく
不安にするんだ。
クリスティーナの態度だけが不安なんじゃない。
なぜなら、昨晩の夜会で僕の心に一番残ったのは......」
そう言いながら間合いをつめた伯爵が、フィーネの顔を覗き込む。
「君に、知った人に似ていると言われたこと」
「えっ」
「グリアム=フィリオ男爵だったっけ、それはひょっとして君の
初恋の人?」
「い、いや、違います!」