甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 暗い部屋の中に、開けたドアの分だけ、明かりが四角く床にのびる。

 ダイニングの明かりが、暗いフィーネの部屋の中にもわずかに差し込んで
 ユアンはベッドに近づくとフィーネをおろした。

 靴を脱がせ上掛けを掛けてやろうとしたところで、フィーネがまた
 ゆっくりと目を開く。

 焦点の定まらない目でぼんやりとしているのは、寝ぼけているのか、それとも
 まだミルズ男爵の姿のままのユアンが誰かわからず、戸惑っているのか。

 でも、その瞳がユアンの視線を捉えたとき、フィーネは小さく呟いた。



   「ユアン」



 やっぱりわかるんだな......歪んだ薄い皮肉な笑みが、ユアンの顔に浮かび
 薄暗い部屋の中なのに、フィーネのグリーンの瞳が、妙に濡れたように
 光って見えるとユアンは思った。

 途端にユアンは、力がほどけていくのを感じた。

 髪の長さが変わり、色が変わり、瞳の色が変わり始める......。
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