甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 自分がなんにもしていないのに、勝手にもとに戻り始める自分に
 ユアンは愕然とした。

 どうしたんだ? いったい何が起こっている?

 こんなことは今まで一度もない。

 ユアンは焦った。

 それに自分は、また、フィーネの目の前で変わろうとしている。


 _ _ 驚きと、怖れ _ _


 変化を目にした者が浮かべるその表情を、ユアンも怖れる。

 相手の瞳に、嫌悪と恐怖が浮かぶのを。

 今フィーネの瞳にもそれが浮かぶのだと、怖れを感じ、ユアンは身体を
 強張らせたが、変わっていくユアンをじっと見上げていたフィーネは、
 なぜか、ゆっくりと、やわらかく、微笑んだ。
 
 そして、手をのばし、ユアンの頬に触れる。



   「ユアン......そんな顔しないで」

   「くっ......」


 小さく声を漏らし、ユアンはフィーネを抱き寄せる。

 今まで感じたことのない、緩やかな暖かい気持ちが、急速に
 胸の内を満たしたいく。

 自分の頬にふれる、フィーネの頬のやわらかさを感じながら
 ユアンは囁いた。




   「ゴードン邸の晩餐会に招待されたよ。一緒に行ってくれるだろ」



 かすかにフィーネが頷いたように感じたが、身体を離し覗き込めば、
 フィーネはすっかり目を閉じて、また穏やかな寝息をたてていた。

 苦笑いをもらし、フィーネを静かに横たえると、ユアンは首筋にではなく
 フィーネの額に、そっとキスを落とした。




 

 
 
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