甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
最後のデザートがだされ、晩餐会は終わりに近づき、フィーネはほっと
安堵の息をはいた。
本当なら食事の後も、好みの飲み物を手にお互いの親睦を深め、会話を
楽しむのが普通だが、身分を偽っていることもあり、ユアンは早々に
引きあげると言っていた。
しかし、デザートをさっさと平らげたゴードン氏が、くるりとこちらを
向くと、
「デザートもいいが、隣の間で輸入物のウイスキーでもいかがです
かな、ミルズ男爵」
とユアンを誘う。
紅茶のカップを手にしていたミルズ男爵......ユアンは少し悩んだように
フィーネをちらりと見たが
「では、少しだけ」
と言って、立ち上がった。
「少しだけだ、ゴードン氏ともう少し詰めたい話がある」
そう潜めた声をフィーネに残し、ユアンは背をむける。
フィーネは不安になった。
ユアンがいれば、会話は彼に任せておけばよかった、でも、離れて
しまえばどうしたらいいかわからなくなる。