甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
大体、今晩ここに来ることは反対だったのだ。
商談の席に少し同席するだけならともかく、何人か人が集まる場所で
嘘の男爵夫人を演じる自信なんてない。
それなのにユアンは
「君はもう、出席することを了承しただろ」
なんて言って。
いったい、いつ、私が YES の返事をしたというのだろう。
ユアンの言うことは、時々、本当に意味不明だ。
晩餐会の話なんて聞いてない、と言えば、ユアンはまたいつもの
何を考えているかわからない顔で、じっとフィーネを見たけれど
結局、いつものようにドレスを準備され、強引に事は進められた
のだった。
ユアンが準備したのは、カナリア・イエローのドレス。
胸元がV字にカッティングされたドレスに、同色のリボンを首に巻き、
リボンからさがる雫形の淡い色のグリーン・サファイアが、深く開いた
胸元を飾っている。
程よい大きさのサファイアは、フィーネの濃さの変わるグリーンの瞳を
よけいに神秘的にみせていたが、フィーネの胸を騒がせたのは、
上品なイブニングコートを着てあらわれたユアンのタイに、同じサファイアが
光っているのを見た時だった。
同じ色、おなじ輝きの宝石を身につける。
そのことが、心を通わせた夫婦の証のようで、フィーネはどきっとした。
あの時、フィーネがじっとユアンのタイピンを見ていることに気づいた
ユアンはかすかに口許を緩めると、とんと指先でフィーネの胸許を飾る
グリーン・サファイアに触れた。
「花言葉と同じで、宝石にも意味を持つ言葉があることは知ってる?」