甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「知らないわ』

   「グリーン・サファイアがもつ意味はね」



 わずかに目を伏せ、フィーネの胸元に視線を落としたユアンは
 そう言葉を続け、指先で触れていただけのサファイアを、今度は
 摘み上げたから、すこし冷たいユアンの指先がフィーネの肌に触れた。

 ぴくりとフィーネは身体をふるわせ、そして頬を赤らめる。

 自分が過剰に反応してしまったような気がして、恥ずかしくなる。

 頬が熱いと感じれば、赤くなっているかもしれない頬をユアンに見られるのは
 もっと恥ずかしくて、ユアンの指先から逃れる方法はないかと考えてしまう。

 でも、胸元に視線を落としたままのユアンは、フィーネの顔を見ないまま
 少しかすれた、切なげにも聞こえる声で呟いた。



   「偽りのない愛」



 その声の響きに、フィーネはまじまじとユアンを見たが、ユアンはフィーネと
 目を合わせないまま、サファイアをから手を離すとフィーネの指先を
 もちあげた。



   「時間だ、でかけよう」



 優しく促され、まるでお姫様のように扱われれば、フィーネの胸はまた
 騒がしくなった。

 そして、魔法にかけられた少女のように、夢見ごごちでフィーネは晩餐会に
 やってきたが、今、こうして一人取り残されれば、魔法は薄れ、
 フィーネの不安は増すばかりだ。

 

 
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